ニュージーランド生活お役立ち情報

【コロナウイルス対策】ニュージーランドがロックダウン前に準備していた17つのこと

NZコロナウイルス警報システム4レベル

2020年3月26日からニュージーランドは4週間の全国ロックダウン(都市封鎖)に突入した。2月28日に最初のコロナウイルス感染者が出てから、27日目のことだ。

エッシェンシャル・ワーカー以外は、全ニュージーランド国民は基本的に自宅待機。国民はスーパーに買い物に行くくらいしかできない。公共交通機関は止まり、学校、飲食店、公共施設は閉鎖。厳しい4週間のロックダウンが始まった。

しかし、ニュージーランドはいきなりロックダウンに突入したわけではない。今回は、ニュージーランドがロックダウン前に始めていたコロナウイルス対策について話したいと思う。

①非常事態通知用の携帯電話システムが導入済み

2017年11月からニュージーランドでは、非常事態を国民に知らせる携帯システムが導入されている。《Emergency Mobile Alert》という。映画「パージ」を思い出させるビービーという薄気味悪いアラーム音と共にメールが国民の携帯電話に届く。

2019年11月のテストメール受信者は87%

2017年以来、毎年11月に国民の携帯電話にテストメールが届く。2019年のテストメール受信者は全国民の87%にも及んだ。通知メールは、今回のコロナ対策でも大活躍の民間防衛危機管理省《Ministry of Civil Defence and Emergency Management》から送られてくる。

わたしが受けた非常事態通知メールは2回

ロックダウン開始通知を知らせる《Emergency Mobile Alert》

私がテストメール以外で、非常事態通知メールを受けたのは2回ある。

  1. 自然災害による避難警告。これは被害を受けた私の地元地域だけに送られてきた。
  2. 今回のコロナウイルス対策としてのロックダウン開始を知らせるメールが全国民の携帯電話に送られた。

ロックダウン開始の知らせとともに、以下の3つのシンプルなメッセージが添えてあった。

  • STAY HOME(家にいよう)
  • 自分がコロナウイルス患者であるように振る舞え
  • SAVE LIVES(これが人の命を救う)

②NZ国民を含む入国者全員に14日間の自宅待機を義務付け

3月14日にアーダーン首相は「ニュージーランドへの入国者全員、14日間の自宅待機」を義務付けた。3月15日より施行。この入国者というのには、ニュージーランド市民権、移住権保持者も含まれていた。この時点での感染者は8人。

全クルーズ船は6月30日まで、ニュージーランドに寄港できないことになる。

③感染者が少なくても早い時期から国境封鎖

ニュージーランドは、3月19日午後11時59分より国境を封鎖した。ニュージーランド市民権、移住権保持者以外の外国人はニュージーランドに入国できない。この時点での感染者数28人。

それに先駆けアーダーン首相は、上記のように入国者全員に14日間の自宅待機を義務付けていたので、ニュージーランド国民といえども帰国はできるが、14日間の自宅待機を命ぜられた。

④ソーシャル・ディスタンス2mが定着

3月26日のロックダウン以前に、ニュージーランド国民にはソーシャル・ディスタンス2ⅿが定着していた。この2ⅿは世界保健機構(WHO)が提唱していた「1m」の2倍だ。ニュージーランド国民はコロナ感染防止の当初から「2m、2m」と言われ続けていた。

⑤コロナウイルス対策用に4レベル警報システム導入

3月21日ニュージーランド政府は、コロナウイルス対策用に4レベルの警報システムを導入した。最初の感染者発生から22日後、感染者数52人のときである。

アーダーン首相から、この4レベルの警報システムが発動されたときは、すでにレベル2であった。

4レベルの警報システム

この4レベルの警報システムは、ニュージーランド国内のコロナウイルス感染状態を表している。そして、それぞれのレベルでの禁止事項も示唆されている。

  • レベル1:コロナウイルスを抑制できている状態。
  • レベル2:コロナウイルスを抑制できているが、感染が広がる可能性がある状態
  • レベル3:コロナウイルスの抑制が困難な状態。感染が広がり、複数のクラスター発生
  • レベル4:コロナウイルスの抑制ができていない状態。(=ロックダウン)

⑥コロナウイルスが抑制可能な時期でも70歳以上は自宅待機

コロナウイルスが抑制できていた時期「レベル2」でも、

  • 70歳以上の高齢者(52.8万人いるといわれる)
  • 呼吸器官疾患者
  • 免疫不全者

などの感染リスクが高い国民の自宅待機が始まっていた。ちなみに、ニュージーランドの国会議員で70歳超えはひとりだけ。

⑦飲食店小売店は客の出入りを記録する

飲食店小売店は、来客者の出入りを記録する。

  • 名前
  • 携帯番号
  • Eメール
  • 入退店時間

来客者の情報を店側が記録しておくことで、感染者が出たときに感染経路の追跡がしやすいというのが狙いだ。

3月20日に導入された上記の警報システム(このときレベル2)に伴うものだ。この時点でのニュージーランドの感染者総数は52人。コロナウイルス発生から21日後には、ニュージーランドはすでに感染経路追跡を念頭に入れていたということだ。

⑦コロナウイルス対策の独自サイト

NZコロナウイルス警報システム4レベル
NZコロナウイルス警報システム4レベルの表

ニュージーランド政府は、コロナウイルス対策用の独自のサイト《Unite against COVID-19》を立ち上げた。黄色、黒、白3色のシンプルな色使いだ。この3色は、コロナウイルス対策用のポスターやテレビのコマーシャルにも使われている。

⑧シンプルなスローガン

アーダーン首相はコロナウイルス対策が始まった当初から、シンプルで分かりやすいスローガンを掲げている。

Stay home. Save lives.(家にいよう。命を守ろう。)

ニュージーランド国民は、この分かりやすいシンプルなスローガンを実行してくことになる。

⑨ロックダウン開始前に48時間の準備期間

アーダーン首相は警報システムをレベル3に引き上げるときに、同時にレベル4(=ロックダウン)は48時間後と発表。3月24日のことだ。

  • 他の地域の大学に通っている子供が親元に帰ってくる
  • 海外にいるニュージーランド国民が帰国の準備を始める
  • 買い物などロックダウンの準備、など

ロックダウンまでの48時間の準備期間が、ニュージーランド国民のパニックを避けるのに役立った

⑩レベル3警報システムでも厳しい規制

ロックダウンの一つ手前の「レベル3」でも、規制はかなり厳しい。

  • 公共施設(図書館、博物館、映画館、ジム、プール、公園等)閉鎖
  • 飲食店(ファーストフード、レストラン、喫茶店、パブなど)閉鎖
  • 人と差し向う職業(美容院、マッサージ店など)閉鎖
  • 集会、パーティ、スポーツ試合禁止

などが挙げられる。

⑪オンライン授業の準備

前回の記事【コロナウイルス対策】ニュージーランドが厳しいロックダウンを可能にしている15の理由でも触れたが、ニュージーランドの教育機関ではすでにオンライン授業が浸透している。ロックダウンの有無に関係なく、高校生などは通常時からGoogle Classroomなどで各教科の課題を共有されている。それに加えて教育省でも、リモート授業の準備を始めた。

  • 教育テレビ番組の作成
  • 教育教材の作成と配布準備
  • 貸出し用に1.7万台のデバイス購入、など

政府がしていた準備は、特にオンライン環境のない家庭、デバイスを持っていない家庭のことも考慮に入れた準備だった。

⑫医療センターへの通院70%カット

3月22日地元の医療センターから私のところにEメールが届いた。医師と差し向かいでの診察は70%カットするという通知だった。まず医療センターに電話連絡し、判断を仰ぐ。医師の診察が必要なら通院。3月23日から施行。(これは地域ごとによって違うかもしれない)

⑬元医療従事者へのリクルートと登録システム開設

ニュージーランドでは、コロナウイルス発生から3週間ほどたったころから、現医療関係者のバックアップ要員として、引退した医師や元医療従事者のリクルートを始めた。ロックダウン開始までに2,500人ほどの元医療関係者が登録済みだったという。電話対応など適材適所に配置していくとのことだ。

ニュージーランド政府は自国の弱点を知っている。この国にはICUが170床しかない。医療崩壊は絶対に避けなけらばならない

⑭市立病院と公立病院の役割分担

公立病院が全コロナウイルス患者を受け入れることになったと同時に、市立病院はがん患者やその他の急を要する手術患者などを引き受けることになった。

⑮毎日午後1時のコロナウイルス状況会見

コロナウイルスが発生した当初から、毎日欠かさず午後の1時からコロナウイルス状況説明の会見が行われる。国営放送の1チャンネルやFacebookで観られる。時間が押してテレビが終了になっても、会見の続きはオンラインで見られる。

毎日、厚生省保険局長から詳しいコロナウイルスの感染状況が報告される。

  • 新たな感染者数
  • 現入院患者数
  • ICU使用患者数
  • 重篤者
  • 新たな死亡者
  • 死亡者総数
  • 感染者総数
  • 回復者
  • 前日の検査数
  • 感染経路の比率

などだ。この統計は厚生省のサイトで閲覧できる。会見内容によっては、アーダーン首相、防衛庁、財務省、教育省、警察などのトップも登壇する。

⑯国民に12週間分の給付金を支給

ニュージーランド政府は、コロナウイルス発生18日後に、国民への給付金プランを可決した。12週間分の賃金にあたる給付金だ。

迅速な給付金交付

4月6日時点コロナウイルス発生38日後には、87.6万人(総人口の約18%)に給付金が支払い済みだった。

給付金は企業や自営業者に支給 

ニュージーランドの支給方法は、日本と違う。コロナウイルスで影響を受けた企業や自営業者に、まず支払われる。国からの企業への給付金には従業員分の給付金も含まれているのだ。

給付金は、政府➡企業➡従業員へと支払われる仕組みだ。

私の職場のオーナーは、申請後4日後に給付金が振り込まれたと言っていた。

従業員を解雇するな

給付金プランが発表されて以来、アーダーン首相、財務大臣ともに「従業員をなるべく解雇するな!」と言い続けている。

12週間分の給付金を交付しても、実際のところはコロナウイルスの影響で失業者は4.2%から10%以上になるといわれているが…

⑰日本とは違う国家非常事態宣言

ニュージーランド政府は、コロナウイルス対策のためロックダウン開始の前日に「非常事態宣言」を発動した。

大きなポイントはニュージーランドの非常事態宣言は「国家が通常時以上の権力を持てる」ということだ。

具体的にどんな非常事態宣言か

非常事態宣言が発動されると、国家は具体的にどんな権力が行使できるのか。ロックダウン開始前日3月25日に出されたアーダーン首相の声明から引用してみる。

食糧、燃料および他の必須供給の保全や供給

土地、水、航空交通の規制

道路や公共の場所を閉鎖

公共の場所を含む施設から人を避難させる

必要に応じて、施設や場所から人や車両を除外

3月25日のアーダーン首相の声明から

そしてロックダウンが始まり、実際に取り締まりにあたっているのはニュージーランド警察だ。道路にチェックポイントを設けたり、ロックダウン違反者を公的に逮捕できるようになる。

厳しすぎるコロナウイルス対策と冷笑されても

以上、私が思いつく「ニュージーランドがロックダウン前に準備していた17つのこと」だ。

ニュージーランドでは、世界の中でも飛び抜けて厳しいコロナウイルス対策を実行している国だ。オーストラリアのジャーナリストには「涅槃の世界を目指しているのか」と冷笑されたりもしている。

しかし、ロックダウン4週目にもなりコロナウイルス撲滅対策の成果が出てきているのも確かだ。

2020年4月19日ニュージーランドのコロナ状況(初のコロナウイルス発生51日後)
  • 感染者総計1,431人
  • 回復者総計912人
  • 感染中519人
  • 入院中18人
  • うちICU使用者3人
  • 死者総計12人
  • 感染者の経路追跡済み98%
  • 感染経路不明者2%
  • 感染検査総計83,224人
  • 検査キット保有数91,059個

世界中のコロナウイルスが早く終息しますように。