現在ニュージーランドでは、コロナ撲滅対策が成功を収めつつあります。
私は首相の所属する労働党の支持者ではありませんが、ニュージーランドがコロナと闘うのにアーダーン首相以外の政治家は思いつきません。今回のコロナウイルスに政治手腕を発揮し、アーダーン首相は世界各国から高い評価を受けています。
切れ者の政治家というだけでなく、アーダーン首相の言葉の端々には国民を思いやる「優しさ」がにじみ出ています。アーダーン首相は、コロナがあってもなくても、首相じゃなくても、優しい人なんです。
今回はニュージーランドのアーダーン首相の優しい英語をご紹介します。世界中が見えない敵コロナと闘ってるとき、アーダーン首相の言葉は心にしみます。
アーダーン首相と一緒に優しい、そして易しい英語を学んでいきましょう。
優しい英語①:Be kind
まずご紹介するアーダーン首相の優しい英語はこちらです。
Be kind.(人に優しくね)
この英語のフレーズはニュージーランドのコロナ対策のスローガンの一部です。アーダーン首相が会見の締めに国民に向かって使う英語のフレーズです。
ニュージーランドのコロナ対策のスローガンのは、
Stay Home(家にいよう)
Save Lives(命を守ろう)
Be Kind(人に優しくね)
と、とてもシンプルだけど優しい英語のフレーズとなっています。ニュージーランド国民はこのスローガンのもと、一致団結をしてコロナ撲滅に励んでいるのです。
優しい英語②:You are not alone
アーダーン首相の優しい英語の2つ目は、ニュージーランドが厳しい4週間(結果的には5週間)のロックダウンに入る前に、首相が国民に向かって発した思いやりにあふれた言葉です。
You are not alone.(独りじゃないよ)
ニュージーランドは世界でもまれな厳しいコロナ対策を取ることになりました。エッセンシャル・ワーカー以外は、自宅待機。その他のビジネスは営業中止、スーパーへ買い物や軽い運動以外は家にいなければなりません。どう考えたって、国民は不安になります。
You are not alone. You will hear us, and see us, as we guide New Zealand through this period.
国民のみなさん、独りぼっちじゃありません。私たち(政府)がこのロックダウンの期間、みなさんを導きます。
NZアーダーン首相
私は、このアーダーン首相の優しい英語を聞いて涙が出そうになりました。
優しい英語③:I am very lucky to be surrounded by kindness
こちらのアーダーン首相の優しい英語のフレーズは、自身のインスタグラムで投稿したものです。このフレーズの裏話にはとても心が温まります。
コロナ対策で多忙なアーダーン首相が、ある朝仕事に出かけようとして自室のドアを開けたら、床にお弁当箱と紅茶カップが置いてあったそうです。
お弁当はアーダーン首相のお母さんが作ってくれたもの、紅茶はパートナーのクラークさんが作ってくれたもの。
I am very lucky to be surrounded by kindness.(思いやりのある人たちの囲まれて、私ってなんてラッキーなんでしょう)
優しい英語を発するアーダーン首相は、思いやりにあふれた人たちに囲まれているんですね。
優しい英語④:We can be proud of what we achieved
2020年5月7日の会見で、5月4日からの新感染者数が4日連続で低く、コロナ対策の成果を出しているニュージーランド国民を称えたときの言葉です。
日付 | NZコロナ新感染者 |
2020/5/4 | 0人 |
2020/5/5 | 0人 |
2020/5/6 | 2人 |
2020/5/7 | 1人 |
We can be proud of what we achieved.(私たちニュージーランド国民は、自分たちが成し遂げてきたことを誇りに思うわ。)
《be proud of》は中学の英語の熟語で習いましたよね。「誇りに思う」とかいう意味ですね。
優しい英語⑤:We are not out of the woods
こちらの英語のフレーズは優しいというより、戒めの英語のフレーズです。
ニュージーランドの厳しい5週間にわたるロックダウンが終わり、非常事態宣言がLevel3に下げられた初日2020年4月28日に、アーダーン首相が記者会見の最初に発した言葉です。
We are not out of the woods.(私たちニュージーランド国民は、コロナ危機を脱したわけじゃないわ!)
ロックダウンが終わり、気が緩みそうな国民に対してアーデン首相が注意喚起をしたときの英語のフレーズです。
《out of the woods》という英語の熟語は「危険を脱する」という意味です。この英語を直訳すると「森の中から出て」という意味になります。それに否定を表す英語《not》がついているので「危険を脱していない」という意味になります。
優しい英語⑥:I’m now happy to take your questions
こちらのアーダーン首相の優しい英語のフレーズは、いつも会見の終わりに記者に向けていう言葉です。
I’m now happy to take your questions.(なんでも聞いてちょうだい)
記者会見では、アーダーン首相は自ら会見を仕切ります。日本の国会のように事前通告はありません。記者たちは電撃的に質問します。アーダーン首相は《happy》という英語を使って、質問はなんでもウエルカムよと言っているわけです。
優しい英語⑦:I do worry about your sleep
記者会見を自ら仕切るアーダーン首相ですが、驚くことにほぼ全記者の名前を憶えているのです。
これはコロナに関する会見後の質疑応答で、ジェイソンという記者がアーダーン首相に質問したときのやりとりです。
アーダーン首相:Jason(ジェイソン、質問どうぞ)
記者ジェイソン:Sorry it doesn’t matter(すみません、気にしないでください)*この記者は自分の質問内容をど忘れした。
アーダーン首相:No problem.will come back to you…I do worry about your sleep atm, Justin
(気にしないで。質問はまたあとでね。あなたの睡眠が心配だわ、ジェイソン。)
なんと、コロナ関連の自分がするはずだった質問内容をど忘れしてしまった記者ジェイソンの睡眠不足を、アーダーン首相は記者会見中に心配してあげたわけです。
このやりとりを聞いたアメリカの記者は、自国のトランプ首相と比べ、思いやりにあふれ、記者との会話を楽しむニュージーランドのアーダーン首相を高く評価していました。
優しい英語⑧:let me look into this Sam
コミュニケーションの達人といわれるアーダーン首相が、国民の1人からのコメントに返答した優しい英語です。
2020年4月3日ニュージーランドのロックダウン9日目に、サム(Sam)という人がアーダーン首相のインスタグラムにコメントを書き込みました。
全国にある義肢センターが必要不可欠な仕事とされておらず、営業開始を再検討してほしいとの要望でした。
それに対してアーダーン首相は
let me look into this Sam(サム、私に調べさせて)
とコメントを返しています。
《look into》も中学高校の英語で習いましたね。「調べる」とか「のぞき込む」という意味です。
このサムという人はコメントの中で、自身を《As a double amputee》といっています。《amputee》とは手足などを失った人を表す英語なので、サムは両手切断者か両足切断者ということになります。
特にこの時期コロナ対策で多忙極まりないニュージーランド首相が、自らインスタグラムで一市民に自分の言葉でメッセージを送るなんて素敵なことですね。
優しい英語⑨::we are having ZERO success!
こちらのフレーズは、アーダーン首相がプライベートな一面を見せてくれる英語です。
we are having ZERO success!(成功率ゼロ!)
こちらはニュージーランドがロックダウンに入ってすぐ、アーダーン首相が自身のインスタグラムでお友達からの質問への返答です。
ロックダウンの成功率の話ではありません。なんと、娘さんのおむつトレーニングの話なんです。友達から娘さんのおむつトレーニングのことを聞かれたときの返事です。
コロナからニュージーランドを守るために尽力しているアーダーン首相は、ロックダウン中におむつトレーニングまでしているスーパーウーマンですね。
優しい英語⑩:I have good news, they are!
最後にご紹介するアーダーン首相の優しい英語を訳す前に、ニュージーランドのイースターについて説明します。
ロックダウン中のイースター休暇
コロナ対策の一環としてニュージーランドは約5週間のロックダウンを行いました。その間にイースター休暇があったのです。イースターとはキリストの復活祭のことです。
例年ならイースターフライデー(イースター休暇が始まる金曜日)からイースターマンデー(翌週月曜日)の長い週末は、ホリデー好きのニュージーランド国民は国内旅行にでかけます。
それが、今年はできない。国民は自分の別荘にも行けない、里帰りもできない。自宅で過ごすことになりました。
イースターチョコレート
イースターには、その象徴であるイースターバニー(うさぎ)が、イースターエッグを運んでくれると言われています。イースターエッグとは、タマゴの形をしたチョコレートです。
ニュージーランドではイースターの時期からさかのぼり、2カ月前ほどからスーパーなどではイースターエッグ(たまごの形をしたチョコレート)が店頭に並びます。
子供たちは、イースターエッグの塗り絵をしたり、親が家じゅうに隠したイースターチョコレートを探して楽しみます。
今年はイースターバニーは来るのか
そんな国民が楽しみしているイースター休暇は、今年はロックダウン中でした。国民や記者までもが、アーダーン首相に尋ねました。
今年はニュージーランドにイースターバニーは来るのか?
前置きが長くなりました。最後にご紹介するアーダーン首相の優しい英語は、この質問に対しての回答です。
I have good news, they are!(いいニュースがあるわよ!イースターバニーは今年も来るわよ!)
と、答えたわけです。
自らのインスタグラムやフェイスブックにイースターエッグのぬりえを投稿し、塗り終わったら、家に飾るか、首相あてのダイレクトメールで送ってねと言っていました。
番外編:That feeling when Aunty Cindy says you can play footy again in level 2
オークランドにブルースというスーパーラグビーのチームがあります。日本のサンウルブスもこのスーパーラグビーで試合をしていますね。このブルースのメディア担当者が、非常事態宣言がLevel2になるとラグビーが再開できるようになるという喜びをツイートしました。
That feeling when Aunty Cindy says you can play footy again in level 2.(シンディーおばさんがレベル2になったら、ラグビーできるって言ってる感じ)
このツイートに対する国民の声は非難の嵐でした。
Geez just how disprespectful(まったくなんだよ、失礼だな)
ツイッターユーザの声
Show a bit respect.(もうちょっと敬意を払えば?)
ツイッターユーザの声
She is the Prime Minister NOT your Aunty – respect(首相だよ、アンタのおばさんじゃないんだよ。リスペクトしろ)
ツイッターユーザの声
Bloody disgusting and disgraceful(げぇー最低!恥ずかし奴)
ツイッターユーザの声
twitterに寄せられたコメントなのでスラングが多めの英語になっていますが、アーダーン首相を《Aunty Cindy》おばさん呼ばわりしたメディア担当者に腹を立てています。
これらの国民からのツイートを見れば、アーダーン首相が国民からいかに尊敬されているかが分かりますよね。
今回は、ニュージーランドのアーダーン首相の優しい英語をご紹介しました。
世界中のコロナウイルスが早く終息しますように。